イラストで分かる掛軸用語
用語の解説
- ①掛軸・表装・表具
- 掛け軸は表装・表具の中の一種類です。表装とは和紙や絹に描かれた作品を紙や布,帖などに仕立て上げることを言います。
作品を丈夫な紙や布に張り付けることで強度が増し、巻き上げることで持ち運びやすくなるメリットがあります。
また、掛軸に仕立てず作品単体のままでは長期保管が難しいと言われています。そのような表装を行うものを表装師(ひょうそうし),表具師(ひょうぐし),経師 (きょうじ) など呼びます。 - ②掛緒(かけお)
- 掛緒とは、掛物を吊り下げるために鐶の輪と結び付けて固定する紐の事です。
素材は正絹、正絹代用(絹に似せたもの)などがあり、5キログラム以上の荷重にも耐えうる強靭な紐です。
単色の物から柄物まで様々な種類があり、掛け軸の絵柄に応じて決められることが多いです。
- ③鐶(かん)
- 鐶とは、掛軸上部の八双に打付けてる金具のことをいいます。先端は釘状で上端は輪になっており、掛緒を通すことで掛軸を掛けることが出来ます。
基本的に座金と呼ばれる部品とセットとして扱われます。
鐶はその形状によって異なる種類があり、足をすり合わせてように見えるものが足摺鐶(あしずりかん)、輪の端を丸く曲げ込んだものを江戸鐶(えどかん)と言います。
- ④八双(はっそう)
- 八双とは掛軸の上端を横一線に流れる断面が半月状の木材で、曲面側を「山」平面側を「巻板」と呼びます
また、八双の呼び方も様々あり他に、巻いた状態で最上面に来ることから表木(ひょうもく)、その形状から半月(はんげつ)等とも言われます。
- ⑤上・天(うえ・てん)
- 中廻りの上に位置する箇所の呼称です。
ここには基本的に柄物ではなく無地の素材を使用します。
- ⑥風帯(ふうたい)
- 掛軸の上端から天の長さ分まで下に垂れ下がった日本の帯を風帯(ふうたい)と呼びます。
誕生の由来の所説として、古来中国では野外での掛軸鑑賞の際に野鳥(主に燕)による掛軸への損傷、汚染に悩まされていました。そのため、風帯は垂れ下がり風にたなびくものを嫌う習性のある野鳥除けに使われていたのではないかと言われています。
一般的な風帯は垂風帯(たれふうたい)と呼ばれるもので、その他にも筋風帯(すじふうたい),筋割風帯(すじわりふうたい),押風帯(おしふうたい)、等々いくつか種類があります。
大和表装(行の行)の場合は、一文字と同じ裂(きれ)を使用し、仏画、二段表装の場合は中廻りと同じ裂を用いるのが一般的です。 - ⑦露(つゆ)
- 風帯の先端に綿毛等で飾り付けられた装飾の事をを言います。一般的に白色、紫色、色浅黄色、萌黄色が使用されます。
- ⑧中廻し(ちゅうまわし)
- 一文字の上下に付いている裂地の部分の事をと言います。
掛軸の全体的なデザインの良し悪しを決める重要な箇所です。中縁(ちゅうべり)とも呼ばれます。 - ⑨一文字(いちもんじ)
- 本紙の上下に貼り付けられている裂地の部分の事を言います。他の部分より質の高い裂(きれ)を使います。
本紙と中廻しを美しく結びつける重要な箇所で、この部分の見栄えは掛軸全体に影響を及ぼします。一般的に、金襴の裂地が使われている事が多いです。 - ⑩柱(はしら)
- 中廻しの一部であり、本紙の左右にある部分の事を言います
柱は佛表装の場合、総縁(そうべり)と呼ばれる。 - ⑪本紙(ほんし)
- 作品が描かれている部分の事を言います。
- ⑫落款印(らっかんいん)
- 作品が完成したことを示す作者の印鑑。本紙や桐箱、とも箱等に押されています。
落款にも様々な種類があり、作者名、製作時期、鑑定した者等があります。
掛軸の査定、鑑定において落款を正確に見極めることが出来るか否かは非常に重要なポイントとなります。 - ⑬下・地(した・ち)
- 中廻しの下に位置する箇所の呼称です。
ここには基本的に柄物ではなく無地の素材を使用します。 - ⑭軸棒(じくぼう)
- 掛物を巻くための芯棒、重りとしての役割を持ちます。主にスギの木が材質として使用されます。
重しとしての役割から中に鉛を入れたものもあります。 - ⑮軸先(じくさき)
- 軸棒の両端に取り付ける円形状の突起の事を言います。一般的に象牙(ぞうげ)や角、骨、陶器、焼き物、唐木(からき)、鍍金(ときん)、竹、堆朱(ついしゅ)、など様々な材質が使用されます。
軸先があることで掛軸を巻き上げる際に安定し、綺麗に巻き上げる事が出来ます。種類としてはばち軸、うず軸、切り軸の3つがあります。 - ⑯上巻き(うわまき)
- 掛け軸の裏面、または上部の損傷を防ぐために貼り付けられた薄い絹のことを言います。川俣絹(かわまたぎぬ)などとも呼ばれます。
- ⑰巻き緒(まきお)
- 掛軸を巻き、縛る際に使用する紐の事です。無地、柄物、素材等は作品に合うものを使用する必要があります。
- ⑱軸助(じくだすけ)
- 軸を助けるために軸の裏の両端に張る小さな紙の事を言います。