掛軸の種類と解説
掛軸には表装の方法による違いから、デザインの違い等、幾つもの種類と形式があります。イラストを使って徹底解説します!!
掛軸の種類は大きく二つに分ける事が出来ます。『大和表具』と、『文人表具』です。
- 大和表具(やまとひょうぐ)
- 文人表具(ぶんじんひょうぐ)
掛軸はいずれも中国から伝わったものですが、この二種類を簡単に説明すると大和表具は日本独自の形式、文人表具は中国流の形式です。
大和表具とは?
日本独自の形式、大和表具には大きく分けて格が高い順に真(しん)、行(ぎょう)、草(そう)の3種類の仕立て方があり、更にそこから細かく分けると合計で8種類の仕立て方があります。
格の違いは一文字の様式、有無で判断が出来ます。
- 真(しん)
※最も格上とされる- 真の真(しんのしん)
- 真の行(しんのぎょう)
- 真の草(しんのそう)
- 行(ぎょう)
※ニ番目に格が高い- 行の真(ぎょうのしん)
- 行の行(ぎょうのぎょう)
- 行の草(ぎょうのそう)
- 草(そう)
※最も格下とされる- ※草の真はありません。
- 草の行(そうのぎょう)
- 草の草(そうのそう)
真仕立てについて
真仕立て(しんじたて)は仏像、曼陀羅、道号、頂相、画像、神号など仏教系の作品などに用いられます。
真仕立てにおける格付け
- 真の真 - 最も格が高い
- 真の行 - 2番目に格が高い
- 真の草 - 真の中では最も格が低い
「真の真」の特徴としては作品の周りを一周して囲む『一文字廻』がある事です。
「真の行」の特徴としては作品の上下に『一文字上下』がある事です。
「真の草」には一文字そのものがありません。
行仕立てについて
行仕立て(ぎょうじたて)は大和絵、和書、神道系の作品などに用いられます。
神道(しんとう)とは、仏教、道教、儒教などの影響を受け、日本で独自に開花した八百万(やおよろず)の神々への信仰の事を言います。
行仕立ては別の呼び方として、道補絵(どうほえ)、幢補(どうほ)、 幢褙(どうほえ)、幢補褙(どうほうえ)などと呼ばれる事もあります。
行仕立てにおける格付け
- 行の真 - 最も格が高い
- 行の行 - 2番目に格が高い
- 行の草 - 行の中では最も格が低い
「行の真」の特徴としては作品の周りを一周して囲む『一文字廻』がある事です。
「行の行」の特徴としては作品の上下に『一文字上下』がある事です。
「行の草」には一文字そのものがありません。
草仕立てについて
草仕立て(そうじたて)には書画や画賛などの作品が使われる事が多いです。
草仕立ては一般的に茶の間に掛けられることから、茶掛けなどと呼ばれる事が多いです。
行仕立てと比較して柱と呼ばれる部分が狭くなっていることが特徴です。
草仕立てにおける格付け
- 草の真 - ※基本的にありません
- 草の行 - 2番目に格が高い
- 草の草 - 真の中では最も格が低い
※織田有楽斎は草仕立ての掛軸にも真を用意しました。
「草の行」の特徴としては作品の上下に『一文字上下』がある事です。
「草の草」には一文字そのものがありません。
文人表具とは?
文人表具の文人とは、「学問を修め文章をよくする人」と辞典に記載があります。簡単に言うと『頭が良くて教養もある人』の事ですね。
そんな人が書いた格言や絵(文人画)を題材に仕立てたものを文人表具と言います。
ちなみに、文人とは主に中国人知識人の事を指し、日本人知識人の書いた格言や絵は南画(なんが)と呼ばれます。
文人表具には、文人画だけでなく中国文化を描いたものや南画、漢詩文、篆書などにも用いられます。
大和表具と比べる際に一番わかりやすいのは、文人表具には風帯が付かない事です。
文人表具の種類
文人表具にも袋仕立て、唐表具等の幾つかの種類の他に、明朝という独特な仕立て方があります。
- 袋仕立て
- 唐表具(とうひょうぐ)
- 明朝(みんちょう)
袋仕立て
袋立て(ふくろじたて)とは同じ裂地で上下と柱を繋いだ形式を言います。いずれも風袋は付かず、『一文字』や『筋』が付くものと付かないものがあります。それらの有無により更に幾つかの種類分けが存在します。
一文字も筋も付かないものは普通の『袋表具』。一文字は付かないが筋が付くものも普通の『袋表具』。一文字は付くが筋が付かないものは『丸表具』。一文字も筋もどちらも付くものは『本袋表具』と呼ばれます。
袋仕立ての種類分け
- 袋表具(ふくろひょうぐ)
- 丸表具(まるひょうぐ)
- 本袋表具(ほんぶくろひょうぐ)
一文字も筋もないものは普通の「袋表具」です。
筋が付くだけのものも普通の「袋表具」です。
「丸表具」には一文字上下が付きますが、筋が付きません。
「本袋表具」の特徴としては作品の上下に『一文字上下』、作品の周りに『筋』がある事です。
唐表具(とうひょうぐ)
唐表具とは、一文字や風帯等を同一色にして、その境に筋を入れたものです。細金表具(ほそかねひょうぐ)と呼ばれる事もあり。一文字のみ金襴を用いたものもあります。
「唐表具」の特徴は各部分の境目に『縁(ふち)』が非常に多用されていることです。
明朝仕立て
明朝仕立て、明朝表具とは明の時代に流行した形式の一つです。掛軸の両端を『縁(ふち)』で飾る事で華やかさを演出します。また、その縁の事を明朝とも呼びます。
明朝の太さ、色、筋の有無で明朝表具か太明朝表具かを分けることが出来ます。
明朝仕立ての種類分け
- 明朝表具(みんちょうひょうぐ)
- 太明朝表具(ふとみんちょうひょうぐ)
「明朝表具」の特徴は掛け軸の両端に三分前後の『縁(ふち)』が付いている事です。
「太明朝表具」の特徴は掛け軸の両端『柱』部分が天地を貫くように付けられ、通常の明朝よりも太くなります。
同色の記事で太明朝を表現する場合もあり、その場合は境目に筋が入る事が多いです。